counterfeit illness ― 仮病
「見て見てー僕の恋…っもが!」
「アンタって人はどういう目立ちたがり屋なんすか。」
「これだけいい男を自慢せずにいられるかってのー。」
「はいはいはいはい。」
飲食店でヨザックを自慢しようとしたら本人に止められた。
店内を引き摺られて端の席につくまでの間に数人に笑われたが
とりあえず笑って手を振っておいた。
僕はどうも恋人が出来ると自慢したがるムカつくタイプの人間らしい。
自分が相手と比べて見劣りしようが関係ない。
渋谷は関係あると言いそうだが、声を大にしてそんなの関係ねぇ。
「俺なんかで満足するたぁ…双黒のお二方は本当に庶民派なことで。」
「それ厭味?」
「…猊下に言われるほうがよーっぽど厭味なんすけど。」
「はい。」
乙女として彼氏の分を小皿に取り分けたり飲み物を注ぐのは当然だよね。
大賢者というご身分だとしてもそこは外しちゃいけないと思うんだ。
だからそんな呆れたような疲れたような顔されてもさ。
深い溜息の後にほっぺたがぐいと引っ張られた。
口の中に物が入っていた僕はとりあえず飲み込もうとそのまま噛み続ける。
「可愛い顔して。」
その続きは決していい台詞ではないんだろうけど
温かな指の感触と、困った弟にするような笑みと、
今、自分を取り囲んでいる全ての物が浮き立った。
ごく、と食べ物を押下した後に首の下から漫画みたく熱くなってくのが分かる。
「へ?」
「わぁ照れる!不意打ちの口説き文句なんてズルイぞ!」
「ちょっちょっちょっとー何で今照れ始めるんですか。」
「ツボだったんだよー!」
仲睦ましいと囁かれる声に隠れたくなった理由が怖くて追及出来ない。
2007.09 thanks you web clap!
変なところや変なタイミングでツボに入ったりしたら可愛い。
という妄想だったんですが猊下がただの変な子に!
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