the last of the story −話の結末


終盤になって手を放したら、心境の変化を認めたように思うので
僕はその後もヨザックの手を握り倒して街で会う人に自慢しまくってやった。
恋ははしかのようだと、誰だか知らないけどよく言ったもんだ。
それまではただ気のいいお兄さんと遊んでるつもりだったのに
ちょっと照れることがあったらコレだ、心がふわふわと浮き立っている。
ほんの数分でやっぱり気のいいお兄さんと遊んでる空気に戻ったけれど
思い出すとなんとなくぷくく、と込み上げてくるものがあった。
なんでトキめいちゃったかなぁ、自分。とか。

街を振り返ると、そこには幸せな夕暮れが広がっていた。
帰る場所はここにはないんだと気が付けば
自然と僕は大賢者なんだという意識が戻ってくる。
遊びすぎた自分に息を吐いて護衛の手を放した。
空に向かって腕を伸ばし起き抜けみたいな心地を振り払う。
「いやー年甲斐もなくはしゃいだなー。」
「そっすねー、下手すりゃ坊ちゃんより悪目立ちしてましたよ。」
「あちゃー。自覚症状はあるけど、御免。」
「いーえー。猊下とデート出来るなんてーグリ江一生の思い出にするー。」
「次があるさ、次が。」
「次だぁ?遠慮しますよー。猊下のお遊戯は合わせ難くて。」
この物言いも、一日付き合って貰ったあとだと毒素に欠ける。
ヨザックは面倒で手強い相手の方が好きそうだよなぁという想像に
少しの根拠が出来た。
やっぱり人間、想像だけじゃ量れないね。
触れ合うのが一番だ。

「なんだよーこの間に僕にちょっと情が湧いたりはしなかったわけ?」
「照れてる猊下にはちょっとトキめいたかもー。」
「あ、僕もあんときは不覚にもちょっとトキめいた。」
「まさか真っ赤になられるとは思わなくてですね。」
温かな指が同じように頬に触れた。
それは部下が困った上司の僕に向ける情けない笑みだったけれど
眉毛の下がったその顔が僕はとてもいいと思う。

「照れるんだって、言っただろ。」
「照れた猊下って母性本能擽られるわー。」

折角放した手でもう一度僕に触れるなんて。
デートの終わりに僕達は始まりの笑みを浮かべた。

2007.09 thanks you web clap!

恋なのか、友情なのか、まだそっとしておきたいのですが
何かの始まりには違いない感じで終わらせておきたいと思います。
んえ?思い切り恋?そりゃまぁ、基本がヨザケン脳ですから!!

続きが気になるというお声を頂きました…お、思いついたらね!!(汗)

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