clear blue − 抜けるような青
何の目的もなく外に飛び出してきた僕はヨザックに連れられて
城下をぷらぷらと散策することになった。
渋谷がランニングや脱走なんかでよく訪れているせいか
双黒の大賢者様が街に居た所で大きな騒ぎなどは起きない。
焼き鳥を差し出される歓迎と僕グッズに出会って苦笑いしていたら
横から勝手に絵を描かれる程度のハプニング。
ヨザックがやんわりと断ってから僕の肩を抱いてその場から離れる。
追いかけようとしていた僕が好きらしいおじさんがビクッとして踏み止まったのは
ヨザックが思い切り睨みつけたからだ。
「町自体は平和ボケしてますけど、アンタのファンには過激なのが多いんで。」
「過激なファンねぇ…じゃあ君は恋人で今はデート中ということにしとこ、うん。」
「本気ですか?事実そうでないとしても俺なんかと噂になっちゃ問題でしょうよ。」
「いいんじゃない?あぁ、君に恋人が居るなら問題だ。」
渋谷のファンに過激派が少ないのはフォンビーレフェルト卿の影響が大きいと思われる。
身分も顔もちょっとわがままな所があるが性格もいい彼以上に魔王の婚約者に
相応しい人物は居ないと誰もが思っているのだ。
アルノルド帰りの彼なら多少身分が低くても大賢者の相手として認められるだろう。
女装を嗜むという変わった特技だがそれをも許容する僕の懐の深さ、という
オプションもバカっぽくていいと思う。
そろそろ謎の大賢者様から親しみやすい大賢者様に鞍替えしたい所だ。
何気なく手を握ってみたがなんら恋人という感じがしない。
そりゃそうだ、女の子なら嘘でもトキめけたが相手は自分よりゴツイ男なのだから。
いや、フォンビーレフェルト卿が相手なら或いは…あれだけの美少年ならその気になれる。
「逆に僕が女の子側になればいいのか。一応美少年なんだった。」
「ひどーいグリ江が居るのに乙女ポジションになろうなんてー。」
シナを作るヨザックを見上げ乙女になろうと努める。
背が高くて、顔もよくって、声はジャジー、少しワイルド、危険な香り。
なんてこった。10人乙女が居たら8人は確実にトキめくじゃないか。
「前から思ってたけど君って無駄にカッコイイねぇ。」
ヨザックの瞳が、信じられない物を見るように見開かれた。
抜けるような青の瞳がキレイだった。
2007.09 thanks you web clap!
村田だけでなく有利も思っていると思います。
ヨザックかっちょいいなコノヤローと(笑)
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