silly little things − 取るに足らぬ事柄
机上の論理、とはこういうときに言うんだろうな。
広げた眞王廟の見取り図に見張りの兵と巫女さんの位置を書き込んで
僕はそれの前で腕組みをする。
渋谷のようにアウトドア派ではない僕だが、こう毎日引き篭もっていると
たまには外に出たくなる。
大袈裟な護衛や出迎えなしに外でのんびりする為にはどうすればよいか。
その答えは誰にも気付かれずに外に出られればいい、である。
誰にも気付かれずに外に出る、を実行に移す為にはどうすればよいか。
門番やら衛兵の位置や動きを正確に捕らえて隙を突けばいい。
「うーん…流石は眞王廟、人数と護りだけは最強。」
眞王廟の中をちょろついて戻って来た僕の呟きの後半は溜息が半分。
ここから誰にも見られずになんて無理があった。
忌々しいのは壁だ、奇跡的に登れたとしても降りる自信が全くない。本当にない。
24時間体制の見張りに見られずに門を突破する?透明人間でない限り無理だ。
根気よく庭に穴を掘る所から始めた方が確実な気さえしてきた。
「あーっ僕まだ16なのにこんなとこで枯れてくなんてー!!」
渋谷よろしく頭を抱えて机に伏した僕にいつから居たのかヨザックが小首を傾げた。
「ただ走り抜けりゃいいんじゃないすか?」
事も無げに、何故そうしないんだろう、と一種の驚きが篭った台詞に
僕は目から鱗が落ちた気分だった。
お庭番からすれば見られるとか見られないなんて問題ではないらしい。
そうか、僕はやっぱりまだ16歳のあまちゃんだ。
一分後、僕はヨザックの手を掴んで駆け出した。
2007.09 thanks you web clap!
猊下とお庭番の視界は別の広がり方をしていると思います。
猊下が詰まるときはお庭番が、お庭番が詰まるときは猊下が
道をブチ空ければいい。
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