stray cat - のら猫


隣に座って頭を肩に乗せた猊下は俺にくださった
オレンジのチャッキーを手で弄んでいた。
それを取り上げるように持ち上げると猊下の手が追って来て取り返す。
まったりと流れる時間が最初は慣れずにむず痒くなったものだが
猊下とお付き合いするうちにそれは確かな心の休息と思えるようになった。

少し遠くへ掲げた人形に届かなかった猊下の手が空振りする。
「猫みたいですね。」
「もしかして僕ずっとじゃらされてた?」
「目がきょろって動いて手が出るのが可愛くって。」
「君が人形に妬いてるんだと思ってたよ。とんだ勘違い男じゃないか。」
俺に凭れさせていた身体を立て直した猊下の目の前に
人形をちらつかせたが彼は飽きた、と言って紅茶に手をかけた。
何の悪気もなく、彼自身も気分を害したわけではない。

「そういう移り気で気まぐれっぽいとこも猫ですよ。」
「まぁ自分でも犬よりか猫だろうとは思う。」
「坊ちゃんは犬ですかね。」
「純粋で情が深そうなとこがねー可愛いんだよなぁ。」
「隊長ってなんだと思います?」
「ウェラー卿?獅子でよくない?そのイメージが染み付いちゃってんだ。」
「興味ないからって適当に…。」
「動物無理だろ?あんな複雑で真っ黒な感情、人間でしか持ち得ないよ。」
「猊下に真っ黒とか言われるたぁ流石獅子。」
「僕は見た目だけで腹は通常のピンク色なんだけど。」
「真っ白と言わないとこが捻くれてますよねー。」
「うっさい、お魚咥えたのら犬。」
「俺はのら犬ですかぁ?そして何故魚を咥えて?」
「陽気なムラケンが裸足で追いかける為。」
「はぁ?」
「それを皆が笑って今日もいい天気だと思うのが日本の休日の夕方さ。」

のら犬と猫の二人は種族の違いからたまに噛み合わなくなるが
今日もおでこを擦り寄せている。

2007.07 thanks you web clap!

のら犬×猫ってことにしておいて頂きたい。苦しいよ吉田さん!

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