flimsy excuse - 見えすいた言い訳
「やっぱいい酸素が行き渡ってないと頭を使うのは無理だよな!」
いい酸素が行き渡っていても頭を使うのが無理な渋谷は
この短い台詞を早口言葉のように放ち、王佐を振り切り逃げていった。
廊下に出た彼はすぐに意気揚々と婚約者の名前を呼んでいる。
言い訳のあとも見えすく人物は珍しい。
あと何十メートルか、廊下の角を曲がるまで取り繕っては如何でしょうか。
僕の魔王の渋谷有利原宿不利へ、君の大賢者の村田健からの提案。
そもそも、どうせ走って逃げるなら遊びに行くと言っても同じではなかろうか。
「猊下ぁー陛下は私のことがお嫌いなのでしょうかぁあー…。」
「そんなことないよ。渋谷はちゃんと君を信頼してるさ。」
「ではどうしていつもコンラートやヴォルフラムとばかりぃいー…。」
僕だけは逃がすまいとぎゅうぎゅう抱きついてくるフォンクライスト卿の
汁害を避ける為にメモにしていた要らない紙を頭の上に翳す。
おじいちゃんの腕にもう片方の手を添え、逃げないよと態度で示す。
汁は嫌だがこの愛情を疎ましいと思ったことはない。
双黒だからという理由からでも存在を求めらるとそれなりに嬉しいものだ。
「歳が近いせいじゃない?フォンビーレフェルト卿に関しては婚約者なんだし。」
「ざいぎんでばべいじやぢゅうぼうのものまでも…。」
「濁点多いなぁ…フォンクライスト卿、肩の力抜いて、深呼吸ー吸ってー吐いてー。」
「すーはー…あぁ…猊下のお心遣いで今度は別の動悸が…。」
「一度娘さんに診て貰いなよ。その動悸息切れは本当に僕達のせいなの?」
なんてったっておじいちゃんですから。とは言え、見た目はまだまだ色気のある男性。
身嗜みにも気を遣う彼からはほんのりとよい香り。
今メイドさんが入ってきたら“陛下トト”のフォンクライスト卿はますます落ちて
闇で動き始めた猊下トト…つまり僕トトの方で上位になっちゃったりして。
僕トトの上位が結婚出来ないおばあちゃんのウルリーケと
汁害のあるおじいちゃんのフォンクライスト卿って。
ムラケンは老人向けみたいな。
三位のウェラー卿の理由が腹黒同士って、それもあんまりだ。
僕トトを見たヨザックは嫉妬どころか大爆笑、あんまりだ。
ん?ヨザック?
「あ、ヨザックと約束してたんだ。眞王廟に戻らなきゃ。」
つい口にした真実は
見えすいた言い訳よりフォンクライスト卿を傷付けた。
2007.07 thanks you web clap!
有利はギュンターにだけ見えすいた言い訳をしていそうだなぁと思いました。
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