夢想リアリズム


「お前達仲直りしたんだ。」
「何言ってるのさ渋谷、僕達は喧嘩なんてしてないよ。」

けろっと言ってやったら運命の魔王がソーデスカと肩を竦めた。
僕の後ろにはニコニコご機嫌のヨルダンことヨザック。
さっと引かれた椅子に座ると甲斐甲斐しくナプキンまで広げて膝に乗せてくれるご機嫌ぶり。
ちょっと鬱陶しいけど僕もそう機嫌は悪くないのでヨザックの好きにさせている。
叫んだフォンクライスト卿にはとりあえずなんか笑顔で言っておけば大丈夫。
それを見たウェラー卿がグレタ姫の膝に同じようにナプキンを広げかけてあげると
彼女は嬉しそうに笑顔を咲かせた。
女の子は紳士の優しさに弱い。

「なーヨザック、どうやって村田に許してもらったわけ?」
「無粋ですよー坊ちゃん、それは俺しか出来ない愛の行為ですなんですからぁ。」
「端的に言うと肉体のぶつかりあいさ。二人して汗だくになったら風呂でもう一度…。」
「お前は聞くんじゃないグレタ!」

サッと我が子の耳を塞ぐフォンビーレフェルト卿に睨まれたけど
特に謝罪せず前菜を先割れスプーンでつつく。
激しい運動をするとお腹が減る。
渋谷に比べるとひょろいかもしれないけど僕は決して少食じゃないんだよ。
育ち盛りの男が食べないもんか。
元気よくもりもり食べてたら中身の少なくなったコップにヨザックが水を注ぎ足した。
彼は一介の兵士だから食事の席に共に座ることは出来ない。
本来ならこの部屋にさえ居ないハズだがそれは僕の権力とか
彼の図々しさ云々でどうにかなってしまっている。
「猊下、パンのおかわりはたくさんありますからねーんv」
ご機嫌すぎて女装もしてないのにグリ江ちゃん。
自分にメロメロになってる男の顔が面白くてどこまで浮上出来るのか
実験したくなってきた。
「グリ江ちゃん、あーん。」
「あぐ。」
凄い、迷わず食いついたな。その早さにフォンボルテール卿が呆れた顔をしているよ。

「えー…なんか納得出来ねぇ。大人のスポーツだけで村田の機嫌が直るなんて。」
「僕と君じゃ出来ないからだろ。なに?僕の機嫌を直す為なら渋谷は大人のスポーツをしてもいいの?」
「なんだと!?お前と言う奴は尻軽にも程があるぞ!
天秤にかける物が間違っている!!」
「何をどうしたらそういう解釈で話が進むんだよ!」
「本当にねぇ、喧嘩なんて最初からしてないんだよ。」
「だってお前、名前ど忘れされて。」

「忘れてなんかなかったろ?」

僕の言葉を聞いたヨザックがだらしなく緩んだ顔を引き締め獣の顔で面白そうに笑う。
生憎、僕はヨザックの愛に無関心じゃないんだ。
信じている、と言葉を代えればそういうこと。
あのときの感情が嘘か本当かと言われれば本当だけどね。

「バレてましたぁ?」
「は?」
「渋谷、だからキミは子供なんだ。喧嘩したりすると燃え上がる。
これは一種のプレイだよ!」
「最悪だお前達!あのとき真剣にお前を引き止めた俺の労力を返せ!!」
「何とでも言うがいいさ!僕達は最高に燃えた!」
「やーん、もー猊下がやらしい顔でケンって呼んでなんて言うもんだからー
俺の息子がー。」
「お前は聞くなグレタ!」
「僕達仲良しだもん、ねー?」
「ねー。」
「ムラケン様、一度死んで下さい…。」

たまに試すみたいに牙を剥く彼に飴をやろうが鞭をやろうが僕の勝手だろ。
想うだけじゃお腹一杯になれない。
リアリズムの獣と今日も愛を確かめている。

2007.03 thanks you web clap!

結局、ヨザも猊下もお互いを手の平で転がしあってればいいじゃない!

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