現在進行形
肩の寒さで目を覚ました俺は隣で寝ているヴォルフラムにちょっとだけ寄って
毛布をかけ直し、これで一安心、とまた夢の中へまどろみはじめる。
夏の間は暑くて流石のヴォルフも少し距離を置いていた。
蹴っ飛ばされないという事実は嬉しかったがなんか微妙な気がしてならなかったのだ。
寒くなればヴォルフと寝ててもそのせいに出来るぜーなんて
夢現にしてもどうかと思う思考に眠りながら突っ込みを入れる。
でもなんと言うか、ヴォルフラムとはこの距離感が普通なわけで。
こうなってしまったのは不可抗力だと思う。
それにしたってこの距離はないか。
ぐぐぴ、という独特のイビキを奏でているヴォルフの顔は天使そのもの。
見慣れてしまえばコイツは男、と念じなくてもトキめかなくはなったが
可愛いことに変わりはない。
男同士とは言えくっついて寝るのは問題だろう。
村田とこんなにくっついて眠れるかと言われると、答えはNOだ。
キレイだったらいいのか、ジャニーズの奴となら出来るかと問われても同じくNOだ。
ヴォルフラムだけ特別ってことか。
最初はマジかよって思ってたのに、慣れってのは怖いね。
ヴォルフが居ないと淋しくて眠れないなんてことはないけど
コイツが居る方がいつもの感じになってきたっていうのはもう認めた。
ヴォルフがどっかで寝るって言ったら素で「なんで?」って聞き返すぐらいの
日常になってきてるのはもう誤魔化しようがない。
俺ってヴォルフが好きだったりしちゃうわけ?
眠さに惑わされて恐ろしい自問自答がはじまった。
好きだったらこの状況ではムラムラすんのが普通じゃないかとか
でも嫌じゃなかったら好きなんじゃないかとか
考えても考えても嫌いじゃないけど好きか?という疑問系の答えが出る。
友情として片付けるには近すぎる距離。
親友と呼ぶにはまだ早い距離。
決着をつけて変えるには、居心地の良すぎる今の距離。
ヴォルフのことが好きかどうかは非常に重要だが置いておいて
ヴォルフと一緒に寝るのは意外と好きかもしれない。
「だってコイツあったけーし。湯たんぽには最高だ。」
呟いた一言に、俺は満足した。
抱き締めなくてもなんとなく寄ってりゃ温もりが伝わる。
寝相とイビキさえ気にしなければ最高の湯たんぽだ。
朝になっても冷めないしむしろ自分から引っ付いてきてくれて温かさが増す。
冬の朝は離しがたい一品だ。
気持ちいい二度寝のイメージで、元々眠っていた俺の脳は
急激に夢の世界へ引き込まれていく。
眠る間際、野球小僧は指も大切、と唐突に思ったのを覚えている。
朝起きたとき、しっかりとヴォルフの手を握っていた自分に
何やってんだ俺、と突っ込みを入れたがまぁいっかと流した。
俺はきっと今夜も、ヴォルフラムと寝る。
うん。そうだろう。
その妙な確信にも俺はトコトン鈍感だった。
トキメキをすっ飛ばしたもっと大きな安心感に気付くのはもう少し先の話。
2007.10.21
これを「安心」にすればよかったなぁ。
陛下はまだ恋に恋する高校生だから、穏やかな愛には気付きにくそうだなぁと。
自問自答も自我がないときしかやらなさそう、深層心理が出てしまってるんですが
起きるとそれは遠い彼方でもやもやしてる記憶で。
気付いてからはもうハチャメチャだと思います(笑)