守るから。その小さな悲しみごと全て。
は…っと息を呑んで目を覚ました貴方は荒い息のまま
夢の余韻に浸かって、ゆっくりとそれを脱ぎ捨てるように上半身を起こす。
額の汗を腕で拭って大きく息を吸い、吐く。
自己の取り戻し方に”慣れ”を感じて、それが痛々しい。
「猊下。」
「あ、ゴメン…起こしちゃって。」
「いいえ、元から眠り浅いんでお気になさらず。」
「ヨザ。」
「はい?」
「ちょっと手ぇ貸して。」
いつもなら大丈夫、と薄く笑ってすぐに寝直すのに。
差し出した手を握った猊下の冷たさに抱き寄せようかと思ったが
握った手を見つめたままポスっと再び身体をベッドに沈めてしまったので
それは叶わなかった。後を追って自分もゆっくりと横たわる。
指が絡まることのない幼い繋ぎ方。
「猊下?」
「夢を見た。」
「また前世の夢ですか?」
「いんや?」
突然にクスクスと笑い出すので小首を傾げたら
真面目な顔がおかしいと言われた。どういうことですかそれ。
憮然とした表情がお気に召したのかあどけない笑みのまま言葉が続く。
「渋谷がさー…夢でヨザックを一緒にライオンズに入ろうって誘うんだ。」
「らいおんず…坊ちゃんが好きなヤキュウのチーム、でしたっけ?」
「そうそう、でも既にヨザは僕のチームに居るからダメって僕が言ってー…。」
「いやん、グリ江の為に争わないで。」
「欲しいのはこの上腕二頭筋だから。」
「俺は筋肉だけの男ですか。」
猊下の顔の横へ繋いでいない方の手をつき覆い被さる。
緩く耳や首筋に噛みついて、ふうっと息を吹きかけた。
「くすぐったいから。」
「筋肉だけじゃないですよね?」
「ぅん?どうかな。」
「猊下、結局俺はどっちのチームに?」
「喧嘩中に目が覚めた、だからコレ。」
握った手を少し持ち上げて揺らす。
こうしていればもう一度取り合ったときに勝てる気がする、と笑われたが
俺はなんだか複雑な気分になった。
そんな風に捕まえておかないと俺って信用ないんですかねぇ。
俺の何を見てたら陛下に乗り換えるように見えるんだか。
チームぐらいで猊下は飛び起きたりしないでしょうに。
愛されてるって安心感さえ与えられてないってことですか。
自分の不甲斐なさに苦笑して、眠りに落ちていく猊下にそっと口付け囁いた。
これは睡眠学習です、猊下お得意のてすと、にもきっと出ますよ。
忘れないで、覚えておいて下さい。
「夢の中でも…猊下のお側に。」
2007.01.02
猊下最優先でいつも行動してるんだけど伝わってないのかなぁ。
小さくショックを受けてみたヨザック。