もったいない
眩いばかりのハニーブロンドに深い湖を思わせる瞳。
どこにも無駄な部分がない完璧なつくり、目鼻立ち。
形の良い唇から紡がれる言葉が浮気者!でなければもっといいのに。
「聞いているのかユーリ!今別のことを考えていただろ!」
「だから浮気なんてしてないって!」
後半も否定しておけば良いのだが残念なことに渋谷有利は正直者だ。
一番上の兄そっくりに皺を寄せたヴォルフラムの眉間を
有利は思わず人差し指でトンと押した。
きょとん、と一瞬目を丸めたわがままプーの顔はとてつもなく可愛い。
婚約者をとてつもなく可愛く思った自分、寒っ!と有利の中の
野球少年が突っ込みを入れて来て、彼は自分に苦笑いした。
「ヴォルフはなんか色々もったいないよなー。」
「どういう意味だ、僕では婚約者として役不足だと言うのか?」
「違う違う!どっちかって言うと俺が!ヴォルフの婚約者として役不足!」
わたわたと手を振り慌てて否定、自分と相手を指差し確認しながらの台詞に
ヴォルフラムはまた眉間に皺を寄せ、有利もまた眉間を指で押した。
「何を言っている、お前は魔王なんだぞ?どんな相手でもお前の思うがままではないか。」
「それはお前達のものさしでだろー。俺のものさしでは違うんだって。」
「そりゃあ僕は地位に美しさに知性に強さまでも兼ね備えているが…。」
「…俺は地位だけで美しさも知性も強さもないへなちょこですよ。」
自分で言って虚しくなったのか、有利は大きな溜息を吐いて
ヴォルフラムの肩に額を乗せた。
お前は美しいといつも言っているだろう、という眞魔国ものさしを当てながらも
自分に甘えている漆黒の魔王にヴォルフラムは少しふんぞりかえった。
「ヴォルフはさー…今まで女の子に告白されたりとかしなかったわけ?」
「僕ほどの逸材を女が放っておくとでも思うのか?」
「イエ、放っておかないと思いマス。」
「先程から一体ユーリは何が言いたいんだ。」
「んー…なんつか、本当に俺でいいのかなーとか。」
「何の問題がある。」
「そこ言うと最初に戻ってエンドレス。」
「…ユーリは僕の外見が好きなのか?」
「そんなわけないだろー。」
「では何が問題なんだ、僕だってユーリの見目や地位を欲しているわけではない。」
このように、漢らしく言い切るヴォルフラムを
地球ものさしで言う平々凡々の渋谷有利は普通に、凄くいい奴だと思うのである。
例えわがままプーでも、本質的に凄くいい奴だと思うのである。
「やっぱ、もったいない。」
「?」
「捨てないでくれよー…。」
?マークを3つほど頭に浮かべて、ヴォルフラムは眞魔国イチの
色男を抱き締め返した。
2007.01.03
眞魔国の美的感覚と、自分の魅力には鈍感。