天才
眞王廟よりはマシだが血盟城の警備もまだまだ甘いよな。
明日、隊長にちょっと一発ヤキを入れておこう。俺が猊下の部屋に忍び込める程度に。
猊下が地球にお戻りの間に作った天井裏の゛グリ江の小部屋2゛(1は眞王廟のやはり猊下の部屋の上)の扉を慎重に開ける。
天井裏とはいえ猊下の部屋の領域に侵入した瞬間から俺の集中力は
嘆かわしいことに衛兵の後ろをすり抜けるときより上がった。
気付かれたら下から槍で攻撃されかねないからだ。
不審者なら兵士を呼ぶクセに、俺だと槍で突いてくるなんて
愛が痛くてグリ江、暗殺するときぐらいドキドキしちゃーう。
天井が開く部分の下に音が響くような細工や罠が見受けられた。
猊下も俺との愛のドキドキ暗殺ゲームをお楽しみらしい。
負けた方は…まぁ勝敗関係なくいつも胸を射抜かれてるのは俺ですけどね。
「今日は、勝ったなー…っと?」
足音は立てなかったがいつまで経ってもかけられない声に
ハテ?と首を傾けて月明りが差し込んでいる寝台に近付く。
いつもなら声を出せばすぐ気付いて起きて下さる猊下だが今夜は違った。
過去の記憶に夢の中で囚われてはいなさそうだ。
彼が血盟城に泊まるときは大抵が執務が中々片付かず遅くなり眞王廟に戻るのが面倒になったときか、涙ながらに王佐に引き止められたときである。
いや、坊ちゃんに食後の風呂に誘われてそのままという可能性も。
どの過程でも、お疲れ様です猊下。
「そんな無防備にしてると食べちゃいますよー?」
猊下の顔に影が差したのは俺が唇を寄せたせい。
やっぱり起きて下さらないんですネー。
起こさないように気を付けましたけど少し淋しいかなーなんて思ったり。
俺が肘をついたことでベッドが少し啼いた。
寝ている子供に構って貰いたいなんてダメな大人だ。
「言葉がダメなら温もりよね。女は言葉だけでも温もりだけでもダメだけど。」
大人気ないと分かっていながら彼を起こしてしまうかもしれない危険を犯して
毛布を捲り隣に潜り込む。
更に大胆に腰に腕を回して引き寄せ額に額をくっつけた。
これなんだったかな、猫が親分に構って欲しいときにこうやって擦り寄ってた気がする。
猊下の鼓動に自分も合わせて目を閉じると急に窓の外の風の音が響いた。
その音と可愛い猊下との温度差が心を苛んでつい声を紡ぐ。
「猊下ぁ…。」
声が聴きたいんですよ。不貞腐れた声でも呆れた声でもいいから。
起こしたら可哀相だと思うのにねぇ、本当に起こしたくないのに
俺は我儘ですよね。
1人のときは平気なんですヨ。任務の間とかは何だかんだと平気なのに
貴方の前だと妙に淋しくて、オレンジウサギのグリ江ちゃんになるんです。
「あったけ…。」
猊下は逆に俺を冷たく感じるかもしれないが寝てりゃ関係ないかと
またしても自分本位に考えて懐に猊下を仕舞いこむ。
ギュッとされたのは猊下で、でも心が潰れそうなのは俺。
「……ん…。」
「あ…。」
「ヨザ…。」
「すいません、起こしました。」
起こしてしまいました、ではなく起こしました。故意、っていうか愛しい方の恋で。
なんていう寒い文句が浮かんだが俺はそれを喉の真ん中ぐらいで飲み込んだ。
「…猊下?」
すやすやと、眠る貴方が幸せそうに微笑んだ。
お腹の辺りを猊下の手がしっかりと掴んでいる。俺、捕まっちゃいました?
ねぇ猊下、夢を見るぐらい浅い眠りなら起きて下さいってば。
起こしたくないけど声が聴きたい。
俺の我儘な願いは確かに叶えられた。
2007.04.01
へタレヨザ召喚!この召喚魔法だけ得意なんですがどうしたらいいでしょうか?
私のヨザは.hackで言うとデータドレインされた状態だ!!!(爆)