パリ、とクッキーをかじる。
その動作を魔王陛下がなぜかじっと目で追っている。
ごく普通におやつのクッキーを食べていたヴォルフラムは、自分を見つめる魔王陛下の方を軽く見つめ返してみた。
するとあっさりそっぽを向かれる。
一体なんだ。
「へなちょこ、何か言いたい事があるならはっきり言ったらどうだ」
「お前のあまりの可愛さに思わず見とれていたんだ、ヴォルフ、愛してるよ」
「村田っ、おれの真似で勝手な事言うな!!」
しかも似てねーし、と文句を言った有利に村田が笑う。
「だって今渋谷素で見惚れてたでしょ」
「何、本当かユーリ!?」
「……………」
素直な魔王陛下はウソを付くのが苦手だ。照れ隠しのそんな事ねーよの一言すら出てこない。
という事は村田には理解できたのだが、ヴォルフラムにまでは伝わらなかった。
「…何か僕に言いたい事があるのか?」
「あ…いや、そういう訳じゃ…」
「そんなに言いにくい類の事なのか」
婚約者の煮え切らない態度にヴォルフラムの心に不安が過ぎる。
「婚約破棄とか、他に好きな相手ができたとか…」
どうしてそっちに行くんだろうと思わぬ展開を眺めながら、村田は手に持っていたカップをソーサーに戻す。
とっとと告白するなり決着をつけるなりして安心させてあげればいいのに、親友ときたら本当にオクテで困る。
「そんなんじゃねーよ」
「なら何だ」
「だからそれはお前が気にするような事じゃ無いんだって」
「言えばいいだろう。気にするか気にしないかは僕が決める」
「あぁだからそうじゃなくて!!」
堂々巡りを繰り返しとうとう立ち上がって何か言おうとした有利の足に何かが引っ掛かった。
「…え?」
自分で引いた椅子の脚か、はたまた親友がしれっと伸ばした足か。
前につんのめった有利はそのまま正面のヴォルフラムに反射的にしがみ付いた。
というより、ぎゅっと抱きしめる。
だけですんだならともかく、双黒の大賢者の思し召しか渋谷有利の深層心理の願望か、彼の唇はちゃっかりヴォルフラムのものに触れていた。
「…………ユーリ」
「ヴォルフ……」
2人は顔を真っ赤に染めて見つめあう。
千載一遇のナイス偶然。
が。
「今のは事故だから気にするなヴォルフ!!」
これで関係にテコ入れを図ればいいものを、ばっと体を慌てて離した魔王陛下はよりによって咄嗟にそんな事を口走った。そもそもここでいい雰囲気に持っていける手腕のある男だったらこんな自体にも陥っていない。
「……そんなに嫌だったのか」
「え…?」
有利の必死な否定の言葉にヴォルフラムのエメラルドの目が潤む。
何か、何かヴォルフラムにフォローをしなくては。
柔らかくてどきどきしたとか改めてもう一回してもいいかとか、色々な言葉が脳裏に浮かぶには浮かぶのだが。
「むしろラッキーだった」
「らっきーとは誰だ、男か」
ちょっと言葉の選び方を間違えた。
こういう時名付け親だったらさらっと甘い言葉を吐いて上手い方向に持って行けるんだろうに。
しかもちょっと頑張って今日こそ彼に婚約者として何かいい言葉を掛けてあげようとしたつもりだったなどとは、もはや誰にも言えない。
笑う村田には後で八つ当たりの刑、その後で名づけ親の元へ行き気の利いた口説き文句をご教授願う。
そう別の男を思った有利が婚約者と進展するにはもうしばらく時間が必要なようだ。
2007.09.19
「・水陸両用・」の瀬高さまにユヴォル貰うってちょっとレアだと思いませんか?
ぐふふふにやぁり、としながらの10本目です。10本って!すげーなぁ!(笑)
この有利のへタレ度がたまらん愛しいですvああん頑張れよぉヘタレ魔王!!!
弟を口説くための文句を教える名付け親も気になるのですが…ごく。
萌えツボど真ん中のユヴォルを本当にありがとう御座いましたぁ!!!!
ぐふふふにやぁり、としながらの10本目です。10本って!すげーなぁ!(笑)
この有利のへタレ度がたまらん愛しいですvああん頑張れよぉヘタレ魔王!!!
弟を口説くための文句を教える名付け親も気になるのですが…ごく。
萌えツボど真ん中のユヴォルを本当にありがとう御座いましたぁ!!!!