決して細くは無い指が、器用に小さな針を動かす。
一見裁縫など似合わないように見える眞魔国の工作員の足元にあるのは明らかに女物の衣装の型紙で、それに沿って裁断され縫い合わされていく布もこのまま順調にいけば可愛らしい女物の衣装になるのだろう。
休日に兵舎の自室でいそいそ縫い物に勤しむ幼馴染に、コンラッドは呆れて声を掛けた。
「お前の衣装棚は充分服でいっぱいだろうが」
「何言ってんすか、隊長。次に猊下とお会いできる時に披露する新しいお洋服を用意するグリ江の可愛い乙女心じゃないですか」
「いちいち新しい服を作る必要は無いだろ」
「愛され続けるための努力って常に必要なんですよ。隊長みたいに黙ってても女が寄ってくる男には必要ないかもしれないですけどー」
「なら服でなくてもいいだろ」
「え、生まれたままの姿のグリ江をご所望? そんな。猊下ってばっ」
あぁん。と身悶えてみせた幼馴染にコンラッドが眉を顰める。誰がそんな事を言ったか。
「ヨザ」
そしてヨザックの勢いに負けじと彼の目の前に自分の腕を突き出した。
「そういえば袖のボタンが取れそうなんだが」
それを見て、あ、ほんとですね〜とのん気に相槌を打ったヨザックは、机の上の針と糸を引き寄せてくれる。
そして親友に笑顔を向けた。
「オレの裁縫道具使っちゃって構わないですよ」
違う。
コンラッドは思わず頭を振ったが、既に手元の針に集中しているヨザックは気づいてくれない。
あぁなるほど、猊下のためなら服一着手製で作るが、俺のためにはボタン一つ付けられないと。
「隊長」
「なんだ」
思い切り不機嫌に返事をしてやっても、気にも留めずにヨザックは楽しそうに笑っている。
「オレと猊下の結婚式の親友代表挨拶、隊長にお願いしてもいいですか?」
「…そもそも俺はお前と猊下が結婚するという事自体初めて聞いた」
「諦めなければ夢は叶います」
「夢の段階で俺を巻き込む気か」
「やっぱり猊下のお召し物は黒ですよね、猊下に一番似合う色ですから。その分グリ江はとびきり華やかなドレスを着ちゃおうかしら」
そう語りだす幼馴染の目はこれ以上ない程にきらきらと輝いている。
幸せ、なんだろうなぁ。と思う。
「そうだな、お前には華やかな色が似合うと思う」
つい口をついて出た言葉に、ヨザックが嬉しそうに頬を緩めた。
2007.09.17
かわゆなヨザケンを頂きました、が
流石幼馴染…というか次男をこよなく愛する女性の作品ですね(笑)
友達とられてちょっとセンチだとしてもボタンは…!!!
え、猊下が割ってはいる前は「しょうがないっすねー。」とか言って
つけてくれてたってことなんですか!?えぇーちょ…それはそれで萌えす…!
二次災害的に幼馴染の昔を考え込んでしまう作品をありがとう御座いました!
流石幼馴染…というか次男をこよなく愛する女性の作品ですね(笑)
友達とられてちょっとセンチだとしてもボタンは…!!!
え、猊下が割ってはいる前は「しょうがないっすねー。」とか言って
つけてくれてたってことなんですか!?えぇーちょ…それはそれで萌えす…!
二次災害的に幼馴染の昔を考え込んでしまう作品をありがとう御座いました!