まさかの普通次男 その5


非番だというのに血盟城に入り込んでいるのに深い理由は無い。
中庭の芝生に座り込んでなんとなくあちこちの窓を眺める。
まさかどこかで一目幼馴染の姿でも見れたりしないかなんて、まさかそんな事を期待している訳では決して無い。
「よっ、朝帰り」
「うわぁ!!」
いきなりぽんと肩を叩かれてヨザックは思い切り叫び声を上げる。
おそるおそる背後を振り向くと、案の定こういう悪戯をしてきそうな眞魔国きってのお偉いさん。双黒の大賢者こと村田健。
「あんたは…。小器用に気配を消して近づくのはやめて下さいって何度言ったら分かるんですか」
「ヤだなぁ、君が油断してるのが悪いんだろ」
「つーか朝帰りって、なんで知って…」
「服が昨日と一緒」
ビシリと指摘されてヨザックにはぐうの音も出ない。
「で、どうだったの」
「……何がですか」
「言わせる気?」
「………あんまりからかうとすげぇガチに話して聞かせますよ」
「うわ、それはいらない」
そこまで悪趣味じゃないとけらけら笑って断った村田に、ほっとしつつも少しだけつまらない。
昨日の今日でほんのちょっとのろけたい気分であったりする。
とその時、
「ヨザ、猊下」
どうやってこちらを見つけたのか、声が聞こえたのか気配を察したのかはたまた恋という名の第六感の成せる技か、中庭を見下ろす窓から顔を覗かせたコンラッドがこちらを呼んできた。
「……二人きり、か?」
そして事実そのままを淡々と確認した。
ようでいで決してそうでない。
「おや、ウェラー卿。双黒の大賢者さまより一兵士の名が先なんだね」
「すみません猊下、つい」
「つい、って」
素直だなぁと笑う村田にヨザックの方が慌ててしまう。大賢者が気さくな性格で本当に良かった。
「ちょっと待ってろ、ヨザ」
そして窓からコンラッドの姿が消えたが、もしかして彼は仕事を置いてこちらに来るつもりだろうか。
「っていうか、今度こそ僕の事眼中に無かったよね」
「申し訳ありません猊下。ちょっと人よりマイペースなだけで悪気は無いんです」
「分かってるって。君の隣に僕がいるのを見て一瞬不愉快そうにしたもの、あれに悪気があったら不敬罪でお縄だよ」
「…ほんっとうに申し訳ありません!!」
だよな、一瞬眉を顰めたよな。
付き合いの長い自分にしか分からないと思ったが、さすが亀の甲より年の功。
「恋って人を変えるよね〜」
「ちょっと分かりやすくなりましたね」
「執着するものができたんだね、いい事だ。さてさて、それじゃ馬に蹴られないうちに僕は退散してあげるよ。お礼に今度お土産ヨロシク」
「はい」
軽く片目を閉じて去っていった村田と入れ違いにコンラッドが姿を見せた。
「ヨザ」
幸福そうにこちらの名を呼んでくれる彼は、魔王陛下や弟といる時とは少し違う。
近づいてくる恋人に、きっかけをくれた大賢者さまへの感謝はお土産くらいじゃ足りないと思いながら、キスをねだって袖を引いてみた。





2007.09.15

あ あ も う お 幸 せ に v
・水陸両用・」の瀬高さんは水陸以外も行っちゃえると思います、縦横無尽です。
あーもーかーわーいーいー///二人がかーわーいーいー///
ちょっと惚気を聞いて欲しいとか思っちゃう幸せヨザvvv
強請らなくてもキスして貰えるってばぁv
恋がしたくなる素敵な作品でありました…潤いをありがとう御座いました。