いくらなんでも仲が良すぎやしないだろうか。
先週は弟が向こうの家にお泊まり、今週はお友達がうちにお泊まり。
食事中何かと余計な気を回して自分と弟のお友達の仲を取り持とうとしてくる母親が苦々しく逃げるようにダイニングを飛び出してきた勝利は、おそらく下の階で両親と弟と弟のお友達が仲良くおしゃべりなぞしているのであろう気配を感じつつパソコンの電源を立ち上げる。
俺が村田健を好きだと!?
俺の可愛いゆーちゃんを誘惑するあの小悪魔を?
たとえ今から恐怖の大王が遅刻してゴメンとへこへこ降りてくるような事があったとしても、自分が村田健にそんな感情を抱くなどありえない。
人を小バカにするあの笑顔、癇に障るあの声、男らしくないあのしゃべり方。
それなのにゆーちゃんに対してだけはとろけそうに優しい笑顔を見せるのだ。ゆーちゃんに名を呼ばれるととびきり幸せそうに振り向くのだ。ゆーちゃんにだけは!!
なんて腹立たしい。
パソコンに向かうと勝利に向かって微笑むデスクトップの少女と目が合った。
恋をするならこういう子がいい、と頭の中から村田健を振り払う。
「勝利、パジャマ貸してくれる?」
その時いきなり部屋のドアが開けられた。
「村田がパジャマ忘れちゃったらしくてさ」
パジャマを忘れた? お泊りの必需品を忘れるとはなんたるドジっ子。
いや、村田健がまさかそんなドジっ子属性であるはずがない。これにはおそらくもっと深い意味が込められているはずだ。
「渋谷…」
なぜか体にはバスタオル一枚きり、散らかったいつもの部屋に非日常をもたらす白い素肌。
お風呂上り、上気した村田健の赤い頬。
「む…村田。どうしたんだよそのカッコ」
「着るもの、無くて…」
恥ずかしそうにバスタオルを伸ばし太ももを隠そうとする村田に、ゆーちゃんは息を呑む。
「あっ」
その時村田が何も無い所でつまづいた。
彼の身にまとっていたバスタオルがふわりと揺れる……。
なんて事だ。ドジっ子を装ってゆーちゃんを誘おうとは。
「勝利は余分なパジャマ持ってる? なんならお古でもいいし」
「まぁ持ってるが」
ん?
俺のパジャマ?
待て、村田健がこんな失敗をするだろうか。
ちょっとサイズの大きいシャツをゆーちゃんから借りなくていいんだろうか。
いや、サイズの大きいパジャマでも十分役目は果たすな。
だがしかし、奴はどういうつもりなのか、考えろ渋谷勝利。ゆーちゃんが毒牙にかかってしまう前に!!
勝利のお古のパジャマのボタンを一つ一つ留めていく村田健。
ちょっと長い袖で指が隠れてしまっている村田健。
どう、似合います? とこちらを見上げる村田健。
えへ、勝利さんのにおいがする。と嬉しそうにはにかむ村田健。
「……まさか」
かつて天才と呼ばれた渋谷勝利の灰色の脳細胞が答えを弾き出す。
謎は全て解けた。
奴がやたらとゆーちゃんに構う理由。ゆーちゃんにばかり笑いかける理由。
俺を振り向かせんがため!!
そうだ、基本じゃないか。気をひきたいからか素直になれないからか、好きな男の前でわざと他の男と仲良くしてしまうなんて、テンプレ以外の何者でも無い。
こんなにも分かりやすい彼の思いにどう応えてあげるべきだろうかと自分の考えに入り込んだ勝利は幸福な事に、一向に返事をしない兄から借りるのを諦めて自分のシャツを貸す事に決め部屋を出た弟に気付かなかった。
2007.09.14
勝利連載はまだまだ続いています(笑)
…ついに、ついにそう来たか!!!!
早かれ遅かれいつかはこうなると思っていた…勝利の勘違いは留まる事を知らない!
でも妄想よりも何で有利は自分のTシャツとかを最初から貸そうと
しないのかが本気で気になります。だって当初、この連載って有利→?←村田だったハズ。
ああん!ムラケンズの間はどうなってるかしら!!
こうやって私の心を放さないおつもりなのかしら!?ありがとう御座いますコノヤロー!
…ついに、ついにそう来たか!!!!
早かれ遅かれいつかはこうなると思っていた…勝利の勘違いは留まる事を知らない!
でも妄想よりも何で有利は自分のTシャツとかを最初から貸そうと
しないのかが本気で気になります。だって当初、この連載って有利→?←村田だったハズ。
ああん!ムラケンズの間はどうなってるかしら!!
こうやって私の心を放さないおつもりなのかしら!?ありがとう御座いますコノヤロー!