天使とお兄ちゃん


「その気持ちは俺にも分かります」
と答えたコンラッドに、有利は思わず首を傾げる。
どうしてうちの兄はあんなにもお兄ちゃんと呼ばせたがるのか、兄というのはそういうものなのか。
弟を持つコンラッドなら勝利がおかしいと否定してくれると期待していたのだが、意外や意外、コンラッドはあっさり勝利の味方についた。
「いつもはツンと名前で呼んでくる弟がたまにちょっと恥ずかしそうに『お兄ちゃん』と呼んでくれたら、それはたまらないでしょう。同じ可愛い弟を持つ兄として、ユーリのお兄さんの気持ちは痛い程よく分かります!!」
「あ……そう」
しまった、相談する相手を間違えた。
「という訳でヴォルフ、ほら、『お兄ちゃん』と」
「うるさいぞウェラー卿」
「『お兄ちゃん』だよ、ヴォルフ」
「黙れコンラート閣下」
仲がいいのか悪いのか分からない兄弟のやりとりを眺めながら、有利は少しだけ、本当に少しだけ想像してみる。
自分に可愛い弟もしくは妹がいたら。
その子が自分を『お兄ちゃん』と呼んでくれたら。
が、想像力の乏しい有利が思い浮かべた可愛い弟もしくは妹像はなぜか金髪にエメラルドの目のウィーン少年合唱団。
可愛い、でこれが一番に思い浮かぶおれってどうなんだと目の前にいる可愛いとしか言い表しようが無い天使を思わず見つめてしまう。
そうか、こんな可愛い弟がいたら……。
「ヴォルフ、『お兄ちゃん』って呼んでみてくれるか?」
「ユーリお前まで!!」
「ちょっとだけ、一回だけでいいから」
「……分かった、お前が頼むなら」
仕方なさそうにヴォルフラムがため息をついた。
しかし、さすがに言い慣れない言葉を口にするのは少し恥ずかしいのか、僅かに頬を赤らめて俯いてしまう。
だが意を決しゆっくりと視線を上げたヴォルフラムは、上目遣いでじっと有利を見つめてくる。
そして可愛らしい唇が、ためらいがちに小さく呟いた。
「お……お兄ちゃん……」
ブラボー。
ヴォルフラムのあまりの可愛らしさに有利は思わずこくこくと頷く。これは素晴らしい。
「分かりましたか、ユーリ」
「分かった、これは分かる!!」
これからは兄に少しだけ優しくなれそうだ、と一つ大人になった渋谷有利だった。





2007.09.13

・水陸両用・」は当初ヨザケンサイトだったハズ、そして私もヨザケンのはず。
なのに二人で話すと次男と勝利の話ばかり。もう如実ですよこの作品。
有利とヴォルフの話のつもりがうっかり次男と勝利の話  笑
↑瀬高さんのメルより抜粋 
ああもうヴォルフも次男もマジかわゆす。うっかりだなんて言わせないv
故意にお願いしますv 故 意 に v 
ありがとう御座いましたぁvvv