「村田〜」
ゲームがしたいと主張した村田のために隣の兄の部屋からようやくお勧めを一本入手してきた有利は、達成感に満ちた表情で自分の部屋の扉を開ける。
なにせ勝利が出してきた交換条件が「おにーちゃんととびきり可愛く呼べ」。村田のため村田のためと自分に言い聞かせ出血大サービス語尾にハートマークまで付けておにーちゃんｖと呼んであげたら何がそんなに楽しいのかデラ萌えスと謎の言語による雄たけびを発した兄に引きまくり、兄が手から落としたゲームをすかさず拾い上げＢダッシュで逃げてきてしまった……。
そう、そんな激しい戦闘の末に敵が落としてくれたゲーム。村田は喜んでくれるだろうか。
と部屋の中を覗き込むと。
寝てる……。
しかもバッチリ布団にくるまって寝ている。
昨夜遅くまで読書をしていたと言っていた。それでも朝自分との待ち合わせの時間に少し早めに来てくれた彼の寝顔をじっと眺める。
「寝てると可愛いんだよなぁ」
ぷに、とつい柔らかそうなほっぺを摘む。うん、柔らかい。
って何をしているんだ渋谷有利！！
だってあの村田・マシンガントーク・健が口も目も閉じて静かに眠ってるんだぞ。何もせずにいられるか。
意を決して有利はもぞもぞと布団の中に潜り込む。そしてちゃっかり村田を抱き締める。
あんまり気持ちよさそうに寝てるからついおれも眠くなっちゃって。
おれ寝相悪くてさ、ごめんいつの間にか。
幾つも言い訳を考えつつ目を閉じると、隣の村田の温かさについいつの間にか夢の世界に落ちていた。
すーすーと寝息をたてはじめた有利の腕の中で、
「なんだ、キスの一つくらいしてくれるかと思ったのに」
村田はとびきり幸せそうに苦笑した。

2007.08.24