まさかの普通次男 その3


「あぁ、やっぱりここでしたか」
おそらくここにいるだろうと当たりを付けて魔王陛下の執務室の扉を開けると、案の定探し人はここで幸せそうにしていた。
「ヨザ」
お邪魔かと思いきやこちらに視線を向けて笑顔のまま名を呼んでくれる。
かれこれ付き合いはじめて二ヶ月、進展といえば進展だ。
「どうしたんだ、ヨザック」
「これ、渡しに来たんですよ」
そして魔王陛下に向けて交換日記を見せてみると、なぜかしみじみ若さに似合わない溜息をつかれてしまった。
「なんか未だに想像つかねぇよな、コンラッドとヨザックが、って」
「そう? お似合いじゃない」
全く同感でどう反論したものかと困っていると、先に村田が楽しそうに肯定してくれる。
一応その辺りは仲人の責任というものだろう。
「で、どこまで行ったの?」
とはいえ、相変わらず直球な質問の裏にはそれより更に大きな単なる好奇心。
「そりゃ、最後までですよ」
左手に持った日記を軽く振り思わせぶりに片目を瞑ると、
「日記一冊分か」
あっさり看破された上にこちらにまで思い切り大げさな溜息まで送られてしまった。双黒お二方にそんな顔をさせてしまうなんて罪なカップルもあったものだ。
そう、丁度ついさっき交換日記の最後の一頁を書き終えた所。発展するならこの辺りが区切り目だろう。とは思うのだが。
よくよく思い返すとまだ好きとも言われてない。
「もうちょっといけいけどんどんだと思ったんだけどなぁ」
状況としては彼の言うとおり。ふとした瞬間口づけを交わすようになったくらいで、それさえも何の意図があってそんな事をしてくれるのやらさっぱりだ。
まだ心の中はほとんど片思い状態。
「おれコンラッドがヨザックに好きとか言ってる光景全然想像できねぇけど」
「あぁ、それはオレもできませんね」
それがゆえに、全くもって魔王陛下のお言葉には異論をはさむ余地が無い。
「お前ら付き合ってんじゃないのか?」
「付き合ってますけど、別に好きなんて言われた事は無いですよ」
「そうだったか? 好きだ、ヨザ」
「「…………」」
あまりに呆気ないコンラッドの一言に、ヨザックと有利は思わず彼の顔を穴も開かんばかりに見つめてしまった。
村田だけはぐっと親指を立てて楽しそうに笑っているが。
「グッジョブ、ウェラー卿」
「有り難味無ぇよコンラッド……」
「隊長、そういう事は二人きりの時に言ってくれませんか」
そうか、別段何か含みがあって言ってくれない訳ではなく、単に言っていない事に気付いていなかっただけなのか…。拍子抜けにも程がある。
「なら今夜二人で飲みに行こう」
「え、そこで言われ直すんですか? すげぇ行きにくいですけど」
「ならやめようか」
「いや、いちいち真に受けて訂正しなくていいですよ。言って下さい、隊長、是非!!」
魔王陛下の執務机をバンと叩いて力説すると、コンラッドが神妙に頷いた。
「分かった、なら今夜」
「えぇ、今夜」
むりやり小指を掴んで結ばせると、しっかりと待ち合わせの時間と場所を確認する。
なにせこの期を逃すと次に同じ言葉を貰えるのはいつになるか分らない。
「……あぁ、なんとなく村田がお似合いだって言った理由分かった気がする」
「だろ」
後ろで双黒二人が顔を合わせて頷き合っているのが聞こえない訳ではないのだが。

2007.08.15

凄いよね!頂き物がその3だよ!
瀬高様にまたしても頂いてしまいまちたvvv
ああ、その夜が気になって仕方ありませんドキドキ。
陛下のとても冷静で悟ったツッコミに「あぁ…陛下も次男で苦労してるんだな…。」とか
そういう楽しみ方をしてしまった、陛下大好き吉田蒼偉。
ぐふふ、瀬高様本当にありがとう御座いますvvv